震災から一ヶ月となりました。
「天災は忘れた頃にやってくる。」
今にわかに脚光があたっている人物が居ます。
T・Tこと寺田寅彦。
日本物理学の祖であると同時に、漱石門下随一のナイスガイ(三四郎のモデル)。
文武両道とはまさにこの人のことを言います。
物理・自然科学と日本文学がハイブリッドされた、
彼の文章はボンボンヘタレ揃いの日本文学の中ででも、特に光ってると思います。
なんで今脚光を浴びているかというと冒頭にも述べた名言
「天災は忘れた頃にやってくる」のルーツであるとされていること(でも事実はない)。
関東大震災(1923年)、昭和三陸地震(1933年)などに科学者視点の優れた随筆を残して
居ることから、ここ最近注目度が上がってます。
詳しくは青空文庫でどうぞ。
と…いってもその研究は
・金平糖はなんであんな形になるの?
・ひび割れに法則性とかあるのかな?
・水に墨を落とすとマーブルになるけどあれって何で?
とか同時代の物理学者などと比べるとマイペースなユルい研究ばっかりです。
ですが、物理学が原子爆弾の開発に繋がり、
今現在においても暗い影を投げかけている事を思うと…
寅彦の研究や視点はどこと無く人間ベースの「優しさ」を感じます。
それが最もあらわれている「どんぐり」という随筆があります。
ある日いつも病気がちな 妻を植物園に誘う、
喜んでめかし込む妻、誘ったのに待たされて苛立つ寅彦。
喧嘩しながらも植物園で久々のデート。
ふと、どんぐりを見つける妻、突然夢中で拾い出す。
「いったいそんなに拾って、どうしようと言うのだ」と聞くと、おもしろそうに笑いながら、「だって拾うのがおもしろいじゃありませんか」と言う。ハンケチ にいっぱい拾って包んでだいじそうに縛っているから、もうよすかと思うと、今度は「あなたのハンケチも貸してちょうだい」と言う。とうとう余のハンケチに も何合とどこまでもいい気な事をいう。
…そして(続きはWebで)。
人はいい加減でいつも気まぐれ、ただ自然は忠実に執念深く法則にのっとって繰り返す。
人間も自然も理解しようと試みた寅彦の鋭いけどユルい視点は
今だからこそ、さらに輝きを増してると思います。
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